魂の1回転 vol.3
揺れる更半紙
半透明のクリアファイルのフォルダから、数枚重なった薄茶色の更半紙を取り出します。
更半紙には、シャーペンで書かれた細かな文字が、横並びでところ狭しと連なっています。
前回のスロット実戦の場に、印象に残ったこと、感じたことや単に見たものをメモするためにもっていきました。
新しい記事を書くためのちょっとしたアイデア、ざっとした下書きが、本人でしか読み取れないさらっとした字で書いてあります。
1/3ほど開けた作業場の南の窓からは、夕方5時半を回ってもセミの声。
長かった雨があがり1日とおして晴れ、窓が開いていても風はなく、ひたいのあたりに汗が少しにんでいるのを感じます。
机の天板からはみ出した更半紙が、首を固定した扇風機の風でパラパラと音を立て、暑さをほんのり和らげます。
あと2日で、魂の一回転の実戦です。前回からの改善の1つとして、今回から収支をつけようと思っています。
少し深く考える力
数枚の重なりから、初実戦のときのメモを抜き取り眺めます。
B 5サイズの更半紙には四つ折りにしたときについた跡が、細かく散らばった文字を十字で区切っています。
折った跡は、前回の実戦でシャツのポケットにしまうためついたものです。
ポケットにしまったのは、スロットを回すとき邪魔にならないからですが、メモを持っているところを見られるのが恥ずかしいといった思いも少しありました。
メモをじっくりと見てみると「チェリーが出て止まっている台があった。それにするか迷った」「一回転1枚21.7×3=65.1円。 客としてかかわったが、、」「一軒目は、狙い台近辺でだれか回している音が、入り口からすでに聞こえる」 など書かれています。
こういったメモを参考にし「何を書くのか?」をまず明確にし、「誰が・いつ・どこで・なにを・なぜ・どのように」を考え、ざっとした話の流れを作ります。
以前はこういった書く前の下準備は適当で書きはじめていましたが、いまはこの部分にある程度時間をとるようにしています。
文章の流れはおかしくないか、書いていることは食い違っていないか、 嫌な思いをさせる表現はないか、、
準備の段階で、それなりの注意深さを持ち、慎重に考えてから書くようにしています。
「浅はか」のもたらす実り
今回書きたいこと、“何を書くのか?”は「持った優越感。それが、じつは勘違い」です。
でも、どうやって文章にしたらよいか一向にペンが進みません。
1ヶ月ほど前、放置になったサイトにログインしパソコンの画面を眺めたときは、“つぎつぎと文章を書ける”と思いました。
どうしてそんなこと思ったのだろう、、と苦笑で顔がゆがみます。
これまで読書をろくにしたこともなく、いきなり文章をかけるわけがありません。
初実戦の帰り際、ベンチに座り話す老人や他の客に対して、「1回転の勝負で退店する。周りの人より勝っている」そんな優越感を自分が持っていることに、ふと気づきました。
浅はかさは、「ひらめきだけで、つぎつぎと文章を作ることができる」と勘違いする。
浅はかさは、「できなかった頃の自分に対してなら持ってもよい優越感を、他の関係のない誰かに対して持つ」といった勘違いをする。
「思慮深」の産物
以前にくらべ、少し思慮深く文章やサイト作りをできるようになったと感じています。
実戦からしばらくして、優越感を持つ対象を間違えていたことに気づきました。
注意深く慎重に考えてでた答えは、「優越感は、スロットを回す他の誰かにではなく、過去の自分に対して持つもの」 でした。
でも本当は、依存の切り替えを永く継続し、サイトを作り上げることができて初めて、作れなかった過去の自分に対してのみ持てるのだと思います。
「問題解決」自分のため、「依存の切り替え」ただの思い込み、それを独りよがりで仕事ととらえ、稚拙な文章を少し書いて、“今日はよく仕事できた♪”なんて、、傍目には十分おかしな人です。
一回転=65.1円で店をあとにする、、これもまぁまぁおかしな客です。
これを、なにか別のものでイメージしてみました。
ガソリンスタンドで原付バイクお断りのところが、まれにあります。
そこで客を迎えた店員が「レギュラーですか?ハイオクですか?」と尋ねるのに対して、「レギュラー2ccで」と返す客が浮かびます。
稚拙な文章を少し書き、その自分の思い込みの文章が、あろうことか“もしかしたら誰かのためになるかも、、”って。
思慮深は、一か月程度の切り替え継続、かつサイトはるか未完成でも「過去の自分と大差のないことに気づかず、過去の自分に勝っている」と勘違いする。
思慮深は、「ただの自分のための思い込みを、誰かのためになるかも」といった勘違いをする。
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